研究概要 |
(A)軌道成分のサイズ効果 サイズの異なるFePtナノ粒子の試作を計画したが、サイズ依存性を議論できる試料の作製に成功しなかった.そこで,薄膜の磁気異方性のサイズ効果を議論するために,東北大学電通研の島津武仁教授にCoPt薄膜の作製を依頼した.膜厚が3〜60nmのCo_1-xPt_x薄膜(x=14,20at.%)で,膜厚の減少に伴う磁気異方性定数K_uの増大が観測された.この試料について,SPring-8でPtL_2,3-吸収端XMCDを測定し,Ptの5d-電子の軌道成分を評価した.その結果,膜厚の減少に伴う軌道成分の減少を見出した.更に,XMCDを面内と面直の配置で測定し、軌道成分の異方性も議論した. (B)Coの電子状態と磁気異方性 磁気異方性の発現に支配的なCo 3d-分極を調べるために,Co L_2,3-吸収端XMCDをHiSORで測定した.特に,Coの分極が磁気異方性に及ぼす効果に注目した.その結果,膜厚の減少に伴う軌道成分の減少は,Co原子でも同様であることが分かった.以上より,K_uの増大は軌道磁気モーメントの大きさには関係せず,薄膜の金相学的および結晶学的構造に由来すると考えられる. (C)角度分解光電子分光法(ARPES)による価電子帯構造 規則相FePt_3の磁気相転移に伴う価電子帯の変化を調べるために,単結晶FePt_3を用いたARPESの温度変化を測定した.その結果,Fe(3d)-Pt(5d)混成に因るバンド構造が観測され,第一原理に基づく計算との比較検討を行っている. (D)研究成果の発表 真空紫外線物理国際会議VUV-15,第8回垂直磁気記録国際会議PMRC-2007,第12回広島放射光国際シンポジウムで研究成果の発表と情報収集を行った.XMCDとARPESによる研究成果に関する論文2編を執筆中である.
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