研究課題/領域番号 |
17310062
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
西 信之 分子科学研究所, 電子構造研究系, 教授 (60013538)
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研究分担者 |
十代 健 分子科学研究所, 電子構造研究系, 助手 (60317302)
西條 純一 分子科学研究所, 電子構造研究系, 助手 (00390641)
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キーワード | ナノ構造化学 / クラスター / 微粒子 / ナノ構造物性 / ナノ材料創成 / 金属ナノシート / フォトリソグラフ |
研究概要 |
径10-20nm、長さ1μmの銅アセチリドナノワイヤーの大量合成に成功した。このワイヤー状単結晶の電流-電圧特性を調べたところ、バンドギャップが0.5-1.5eVのn型半導体であることが解った。これは、密度汎関数法によるエネルギー状態密度計算の結果と一致した。一方、このワイヤー結晶を100℃で加熱すると、偏析現象が起こり、中央に金属銅原子がワイヤーコアとして並び、炭素原子が無定型炭素として銅の周囲を被覆している。中央は導電性であるが被覆部が炭素原子厚さ10個程度の活性な炭素層であり、空気中で表面が酸化されたためか、被覆部を含む横方向の伝導に対するバンドギャップは5eV程度に広がっていた。今後、炭素の結合状態の光電子スペクトルとバンドギャップの関係を調べていく。 次に、銅アセチリドの一方の銅原子を3級ブチル基に置き換えると、溶媒に可溶で銅原子24個を含んだ(t-buty1-C≡C-Cu)_<24>分子が生成する。この分子をヘキサン等に溶解させ、シリコンや炭素、或いは硝子やプラスチック基盤にスピンコートを行い、平坦度の高い15nm-800nmの厚さのフィルムが得られる。これを250℃に加熱すると、やはり偏析がおこり。球状あるいは多角形の銅ナノ結晶が有機ポリマーマトリックスの中に分散したものが出来た。これに対して、紫外線ランプあるいは248nmパルスレーザー(3mJ/cm^2)を照射すると、フィルム面に平行な銅のナノシートが生成し、光を照射し続けるとナノシートがどんどん融合して1枚の広いシートになっていった。途中の光吸収スペクトルにはプラズモンバンドが強く観測されるが、これはやがて、きわめてブロードに広がって赤外から可視域全体に強度を有するようになることが解った。それでも、試料は透明である。これを利用して、石英板にクロムで1μm間隔のドットあるいは線のパターンを乗せ、下にクラスターフィルを置いてフォトリソグラフを行い、未照射部分のクラスター分子を溶媒で洗い流すことによってポリマー被覆された銅金属のドット列あるいはラインが描かれた。この現象は、プラスチック基盤に銅の金属パターンを描画する技術に応用可能であり、透明電極などの開発に繋がる可能性が高い。特許を申請中である。
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