研究概要 |
立体混雑したトリアリールホスフィンと2,5-ジアリールベンゾキノン又はナフトキノンが交互に連結した分子量にして3500に達する鎖状及びデンドリマー状オリゴマーを鈴木-宮浦カップリングを鍵反応として合成し、分子内電荷移動、酸化還元的性質と分子構造との関係を明らかにした。いずれのオリゴマーも分子内電荷移動により青紫から青色に着色した安定な固体として単離され、ホスフィン部位の酸化電位とキノン部位の還元電位の差が小さくなるほど電荷移動遷移の極大吸収波長が長波長シフトした。ホスフィンーキノンオリゴマーの構造決定においては電子スプレーイオン化による質量分析と^<31>P NMRスペクトルにリン原子に置換した3つの芳香環が形成するプロペラのhelicityに由来するジアステレオマーの分布が反映されることが決め手となった。分子内電荷移動による青色の発色を得るためにはトリアリールホスフィンのアリール基の4位にキノンが直接連結することが必要であり、スペーサーを介したり、アントラキノンと連結した場合には長波長部に電荷移動による吸収は見られない。一方、ホスフィン部位のリン上をプロトネーションすることにより分子内電荷移動による発色を可逆に制御することが可能である。また、本研究では巨大分子構築と並行して基礎的検討を行い、立体混雑したトリアリールホスフィンがフェロセン、アミン、ニトロキシド等と連結した分子の酸化還元的性質、EL素子の正孔輸送剤として知られるジアミンであるTPDのホスフィンアナログにおける混合原子価状態、立体混雑したトリアリールホスフィンのカチオンラジカルの磁気的性質等についても明らかにすることができた。本研究では高周期典型元素の構造の柔軟性に着目し元素が潜在的に有する機能を発現させることから出発し、著名な機能性分子に匹敵するモデル系の構築と新規な高機能性巨大分子への展開を行うことができた。
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