研究概要 |
1.秩序液体相のジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)/コレステロール(chol)混合膜の巨大リポソーム(GUV)の膜分裂が、低濃度のリゾホスファチジルコリン(lyso-PC)、リゾホスファチジン酸やオクチルグルコシドなどの1本の炭化水素鎖を持つ両親媒性物質により誘起することをすでに見出している。本年度は3成分系(DOPC/DPPC/chol)の脂質膜のGUVと1本の炭化水素鎖を持つlyso-PCの相互作用を調べた。液晶相を形成する脂質であるDOPCの膜内濃度が増加するにつれて、膜分裂を誘起するlyso-PCの臨界濃度は増加し、30mol%以上のDOPCを含むGUVでは膜分裂は起きなかった。また、この条件下では高感度電子増倍型デジタルCCDカメラによる蛍光顕微鏡観察で検出できるようなGUVの膜内の大きな相分離は見出せなかった。以上の結果に基づいて、1本の炭化水素鎖を持つ両親媒性物質が誘起する秩序液体相のGUVの膜分裂のメカニズムを提案した(Langmuir, 23, 720, 2007)。 2.負電荷を帯びたジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)とモノオレイン(MO)の混合膜(DOPG/MO膜)やジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)とMOの混合膜(DOPS/MO膜)の多重層リポソーム(MLV)とH^+の相互作用をX線小角散乱法により調べた。ある条件下ではDOPG/MO膜やDOPS/MO膜は中性でL_α相を形成する。このDOPS/MO-MLVを含む水溶液のpHを下げていくと、pH3.0以下でDOPS/MO膜がキュービック相(Q^<224>相)に相転移することを見出した。一方、同じ条件下でDOPG/MO膜は、pH2.0まではL_α相のままであった。さらに、いったんQ^<224>相に相転移したDOPS/MO膜を含む水溶液のpHを中性に戻すと、ふたたびL_α相を形成することがわかり、pH変化による相転移が可逆的であることがわかった(論文投稿準備中)。
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