研究概要 |
1.負電荷を帯びたジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)とモノオレイン(MO)の混合膜(DOPS/MO膜)の一枚膜のリポソーム(LUV)とH^+の相互作用をX線小角散乱法により調べた。ある条件下ではDOPS/MO膜は中性でL_α相を形成する。このDOPS/MO-LUVを含む水溶液のpHを下げていくと,pH2.5でDOPS/MO-LUVがキュービック相(Q^<224>相)に1時間以内に構造転移することを見出した。蛍光のエネルギー移動法によりこの条件下でLUV間の膜融合が速やかに起こっていることがわかった。このpH変化によるL_α相からQ^<224>相への相転移のメカニズムを提案するとともに,相転移が起こる臨界のpHの値について定量的に解析した。このような相転移は細胞中で起こっている可能性が高い(Langmuir, 24, 3400, 2008)。 2.緑茶カテキンは抗菌性活性があり,PC膜の小さなリポソーム(LUV)から蛍光プローブの漏れを誘起することが知られているが,そのメカニズムは不明であった。単一GUV法を用いて,カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCg)とPC膜の巨大リポソーム(GUV)の相互作用を調べた結果,リポソームの破裂が漏れの原因であることがわかった。リポソームは破裂後,膜が折りたたまり1個の小さな膜とEGCgの複合体を形成した。他の実験結果より,EGCgによるGUVの破裂や複合体形成のメカニズムを提案した(Biophys.J.92,3176,2007)。また,膜にコレステロールが存在すると,EGCgによるGUVの破裂が大きく抑制されることがわかった。
|