研究概要 |
本研究は,金属ナノ接点における電流誘起破断の研究を深化発展させ,その成果を電流誘起破断を利用したナノギャップ電極作製に応用することを目的としている.平成18年度は,種々の金属ナノ接点が破断する臨界電流密度の測定およびMCBJ(機械制御破断接合)を用いた種々の実験を行い.以下の成果を得た. 1.前年度の高融点金属の実験に引き続き,平成18年度は低融点のZn,Snのナノ接点を対象として破断コンダクタンスの測定を行い,接点破断の臨界電流密度jcを求めた.貴金属およびAlのjcは融点に対してほぼ直線的な相関を示すが,Znのjcもこの相関関係によく適合しており,金属ナノ接点の電流誘起破断は融解に起因している可能性が高い.他方Sn接点の実験結果は,Snが2種類の破断コンダクタンスを示すことを示唆している.複数の破断コンダクタンスはこれまで観測されておらず,Sn接点の電流誘起破断は他金属とは異なっているようである.なおZn接点の実験では,低バイアスでもZn単原子接点のコンダクタンスピークが観測されず,室温ではZn単原子接点は不安定で形成され難くなっていると推測される. 2.コンダクタンスの2準位揺らぎから接点実効温度を評価する実験では,データ解析を進め,4KにおけるAu接点温度のバイアス依存性は,直線的というよりもむしろTodorovによる理論式と良い整合性を示すことが明らかになった.一方77KにおけるZn接点の温度上昇は理論式よりも強いバイアス依存性を示しており,接点発熱機構に関してはまだ不明の点が多く残されている. 3.MCBJのナノギャップ電極に多層カーボンナノチューブやBDT分子を架橋し,それら分子架橋の電流誘起破断を観測する実験も行っている.ナノチューブについては,従来の1層ごとの段階的な破断に加えて,新たな急速破断モードが存在することを明らかにしている.
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