研究概要 |
本研究は,平成17年度から19年度の3年間で,真空蒸着成膜中に基板の傾斜角や面内角を変化させる動的斜め蒸着法に基づいて,金属のナノ粒子の形態を制御することを目指して行った.具体的にはナノ粒子のサイズ(目標10-100nm),アスペクト比(目標1-10)の設計・制御とこれらを適当な間隔(目標1-100nm)をおいて配向配置する方法を確立することを目標にした.この目標達成のため,1)幾何学的成膜条件によるナノ形態の制御,2)基板加熱やイオンビーム照射などを援用した形態制御,3)形態制御された貴金属ナノ粒子のプラズモン特性の応用を検討した.その結果,1については動的斜め蒸着によって表面に異方性凹凸を形成したSiO_2層をひな形層に用い,その上にAu,Agなどの金属を少量蒸着することで,他の方法では実現することが困難な扁長ナノ粒子の自己組織的な配向配列に成功した.また,計画の初期の段階で,この扁長ナノ粒子アレイが表面増強ラマン分光(SERS)用の増強基板として極めて良好な特性を示すことが分かり,3の検討を前倒しして実施した.現在,高感度なSERS基板,SERSイメージング基板としての実用化の検討を始めている.一方,動的斜め蒸着に外部からエネルギーを与えることによって,形態制御の高度化を目指した2では,加熱基板上に金属を斜めに蒸着するだけで,太さ数10-数100nm,長さ10μmに達する単結晶ナノワイアが成長することを偶然発見した.我々のみならず,世界の研究者が全く予想していなかった現象であり,この分野の研究者に大きなインパクトを与えた.今後ナノワイアもナノ粒子の一種ととらえ,その成長メカニズムの解明や,プラズモニクスやスピントロニクスへの応用を検討していく予定である.
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