研究概要 |
肺サーファクタント脂質の基本成分はDPPC/PG/PA(パルミチン酸)(=68:22:9,wt/wt/wt)を用いた。これは、羊水中の脂質組成と同様あり、最も有効な肺サーファクタント脂質混合物として多くの研究者によって用いられ、また臨床的にRDS治療薬にも適用されている。先ずin vitroで新規人工調製肺サーファクタント(DPPC/PG/PA/Hel 13-5:以下Helと略記)とRDS治療薬(Surfacten:TAと略記)の物性比較を行った。種々の表面物性解析法(π-A等温線、ΔV-A等温線、Hysteresis曲線、蛍光顕微鏡画像)で比較検討した結果、表面物性においてこのHelはTAに匹敵する結果が得られた。そこでこれらの結果をin vivoとの関連付けるために、それらの肺内物性を比較検討した。プロトコルとして、成熟Wistarラットに生理食塩水で肺洗浄を行い、肺サーファクタント欠乏モデルを作製した。その欠乏モデルに対し、100%酸素による人工換気下で、両調製物を気管内投与し、それぞれの経時肺コンプライアンス測定を行った。またその後、ラット肺を気胸させ、静的なP(肺内圧)-V(肺容量)曲線を測定し、肺サーファクタント効果の指標とした。以上より、実際の肺内物性においてもこの調製物HelはTAに匹敵することすることが見出された。 表面物性及び肺内物性の両面からRDS第一選択薬Surfactenに匹敵する人工肺サーファクタントが調製され、この研究の成果は呼吸における肺機能メカニズムの解明及びSP-BやSP-Cの模倣ペプチドを含有するRDS治療薬の開発等に多大に貢献すると考えられる。また、in vitroとin vivo物性の相関関係が確立されたことから、部分フッ素化両親媒性物質を組込んだハイブリッド型人工肺サーファクタントへの応用・展開が期待される。
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