研究概要 |
本年度の研究実施計画に基づき検討を行った結果を以下にまとめる. 1.ナノ粒子の種類,導入方法の検討 フェロセン鉄カルバルデヒドを前駆体として用いることにより,1回の操作で大量の酸化鉄ナノ粒子を球状メソ多孔体シリカの細孔内に選択的に導入する方法を見出した.一般的に行われている鉄のイオン結晶溶液を細孔内に含浸させる方法では,酸化鉄の導入量を増やすことが難しい,また,主として細孔外に酸化鉄が生成してしまうという2つの大きな問題点があった.本方法により,これらの問題点を一度に解決することができた. 2.単分散球状メソ多孔体シリカへの官能基の導入 シリカ源であるテトラメトキシシランに種々の有機官能基を有するトリメトキシシランを共重合する検討を行った結果,有機官能基の種類により共重合可能な組成比の上限は異なるが,多くの種類の有機官能基を細孔内に導入可能であることが明らかになった.特に,貴金属原子との反応性が高いメルカプト基を有するメルカプトプロピルトリメトキシシランを用いた場合は,全ての組成比においてテトラメトキシシランが共重合した球状メソ多孔体シリカが合成可能であることが分かった.また,金属原子との親和性が高いアミノ基を有するアミノプロピルトリメトキシシランも,20モル%までは共重合可能であることが分かった. 3.ナノ粒子の特性の最適化 1項で述べたフェロセン鉄カルバルデヒドを前駆体として用いて合成した酸化鉄/球状メソ多孔体シリカコンポジットの熱処理温度の影響を調べた結果,1000℃まではγ相が,1100℃以上ではε相の酸化鉄ナノ粒子が生成することが分かった.通常観察されるα相は全く生成せず,メソ細孔内に拘束された状態ではγ相が安定化されることが明らかになった.また,ε相は準安定相であるが,約2nmのγ型酸化鉄が高温での加熱により凝集することにより,30-50nmのサイズに成長したものである.これらのコンポジットは,ナノ粒子に特有の超常磁性を示した.
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