研究概要 |
我々は超高真空中の非接触原子間力顕微鏡を用いて、半導体基板や絶縁体基板上で異種原子の識別、垂直・水平原子操作の研究を行い、原子レベル構造体及び原子デバイス動作を検証すことが研究目的である。 本年度の実績は以下のようである。 1.半導体デバイスへの応用面で最も重要であるsi(100)表面に原子操作を適用するため、si(100)表面の安定化した再構成表面を作製した。欠陥の少ない安定な(100)表面を作ることは難しいが、熱処理条件の検討などにより原子操作可能なSi(100)基板が作製できた。 2.半導体デバイス構造において完全な電流分離のために必要である絶縁体を原子レベルデバイスに応用するために、絶縁体のアルカリハロゲンイオン単結晶(KCl或はKBr)の壁開表面を原子レベルで観察した。室温でKCl絶縁体表面上の単欠陥の水平原子操作に成功した。 3.室温での原子操作として新しく発見された原子交換方式を利用する水平原子操作を多種元素系で応用するため、様々な系で原子交換を試した結果、IV-IV属のGe-Snだけではなく、Si-Sn, Si-Pb、また、III-IV属のIn-Si混在表面でも原子交換が起こり水平原子操作できることが分かった。 4.非接触原子間力顕微鏡の原子分解能を保ったまま、原子デバイスに流れる極微少な電気信号をセンシングするため、1pA以下の微少電流測定が可能な超高感度電流計測系を構築した。インプットバイアスは基板の高ドープマイクロ電極領域で、信号検出用プローブは高ドープシリコンカンチレバーを用い、極微少電流測定系にはピコメター電圧ソースを使用した。 5.原子デバイスの基板作製の基礎研究として、Si(100)基板に半導体プロセスを用いて、酸化物マスクや高不純物ドープマクロ電極作製など電気測定のための基板プロセスを行った。100nmサイズのマスクを用いた場合、エッチング後の表面は原子分解能で観察できないほど荒く熱処理などにより改善できないので、マスクサイズを500nmと大きくしてプロセスを行った。
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