超高真空中の非接触原子間力顕微鏡を用いて、半導体基板や絶縁体基板上で異種原子の識別、垂直・水平原子操作の研究を行い、室温あるいは78Kの低温原子レベル構造体及び原子デバイス動作を検証すことが研究目的である。本年度の実績は以下のようである。 1.半導体デバイスの応用で最も重要であるSi(100)の再構成表面を作製し、原子操作に利用できるアトミックステプやダイマー構造を室温で再現性よく安定に測定できた。アトミックステプ近傍は原子間の結合が乱れ、エネルギー的に活性で、吸着物が集まりやすいので、アトミックステプエッジを利用した原子操作が可能である。 2.半導体デバイスの完全な電流分離のために必要な絶縁体を、原子レベルデバイスに応用するために、アルカリハロゲンイオン単結晶(KCl)の壁開表面を室温で観察し、原子レベル単欠陥の水平原子操作メカニズムを明らかにした。原子欠陥は水分子の可能性が高い。 3.Si(111)半導体再構成表面上にGe原子を室温でサブモノレーヤ蒸着した後、78Kの低温でSi表面上のクラスターを観察し、基板のS原子iと吸着Ge原子が混在したナノスケールクラスターのアトミック構造(Si(111)-(7x7)ハーフユニットセルの中央のSi原子の間隔にGe原子が存在)を明確にした。 4.IV族ヘテロジーニアス系であるSi-Sn、Si-Pb混在表面で、水平及び垂直原子操作を行い、室温の新しい原子操作法として発見された原子交換方式を様々な半導体系で検証することができた。Si原子と他原子との交換は準安定状態を通って起きることが分かった。
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