研究概要 |
大震災に伴う人的被害は,時刻,曜日,季節などに応じてダイナミックに変化する人々の都市内滞留者人口・移動者人口の空間分布に依存している。そこで,首都圏で行われた大規模なパーソントリップ調査のデータ(PTデータ)を用いて,「どのような人(性別・年齢)が,いつ(時刻),どこで(場所・施設),何を(目的)しているのか」といった人々の時空間分布を推計することのできる「都市内滞留者・移動者の時空間分布推計モデル」を構築した。まず,分析データの前処理を行った。PTデータは「小ゾーン」と呼ばれる空間範囲(幾つかの町丁目・字の集合)を集計単位として記録されているが,これを直接地図上にマッピングすることはできない。そこで,町名変更や新規町丁目の追加,名称記述方法の違いなどの問題を解決しながら,小ゾーン位置の同定作業(アドレスマッチング)を行った。この作業を終えたデータ(人口動態時空間データ)を用いて,施設内に滞在する滞留者の時空間分布を推計するモデル「施設内滞留者人口推計モデル」を構築した。具体的には,小ゾーン単位で建築物の属性(規模や用途),場所性に関する情報を地理情報データから抽出し,これと人口動態時空間データから得られる小ゾーン単位の施設内滞留者人口との関連分析を行うことで,建築物の属性や場所性,さらに,時刻に関する情報から,施設内滞留者の数を推計するモデルを構築した。しかし,施設内滞留者人口推計モデルでは,鉄道や地下鉄,バス,自動車,さらに,徒歩,自転車等で移動している移動者人口については推計することができない。そこで,PTデータに含まれる各トリップの発地点と着地点の位置情報,および,時刻情報を用いて,移動者の任意の時刻における位置を推定するためのモデル「都市内移動人口推計モデル」を構築し,地理情報システムにおけるネットワーク解析機能を活用して,任意の時刻における移動者の位置と数を推計した。
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