研究課題
基盤研究(B)
歴史地震の研究の基礎となる古文献史料の収集事業は、地震研究所による「新収・日本地震史料」(全22冊、1981-1994)の刊行によって一応の完成を見た。本研究では、主としてこの史料集をもとに、歴史上発生した主な地震について、1地点の一事象を1単位としてデータベースを作成し、記載内容からその地点での震度を推定し、現在の市街地図上に詳細震度分布図としてプロットすることを試みた。海溝型巨大地震の例として、元禄16年(1703)南関東地震の江戸市中の詳細震度図の作成、安政東海地震(1854)の静岡県内の詳細震度分布図が作成された。内陸地震の例として、寛文2年(1662)北近畿地震、安政伊賀上野地震(1854)の京都盆地内の詳細震度分布の解明などがなされた。詳細震度分布と並んで、津波の実像解明も歴史地震の断層メカニズムの解明に資することができることから、過去に発生した津波の実態の解明にも力を注いだ。元禄16年(1703)南関東地震の静岡県伊東市や房総半島での浸水標高の解明や、延宝5年(1677)房総半島東方沖地震の津波の浸水標高調査はその例である。近代の例であるが、1938年福島県沖に発生した地震による津波記録から、その断層滑りのメカニズムを解明した研究もまた、本研究による断層パラメータの推定を行った例ということができる。本研究の始まる2005年の直前、2004年12月26日にインドネシア国スマトラ島北端西方沖合を震源とするM9.0の巨大地震が起き、インド洋に大津波が起きて世界全体として約28万人もの犧牲者を生じた。この地震は、震源の長さが1200kmもの巨大な海域に及んでおり、複数の固有海域のまたがって複合的に起きた超巨大地震であって、「連動型巨大地震」と呼ばれる。我が国の歴史上に起きた宝永地震(1707)もまたこのような連動型巨大地震の例と見ることができる。このスマトラ沖地震の津波の被災現地の調査による研究成果も本研究の一部として含めた。
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