研究概要 |
本研究の目的は,同一流域内で発生した土石流災害と水害について被害想定を関連して行うことのできる統合型シミュレーションモデルを開発するとともに,それに基づいた防災システムの構築を図ることである。研究対象を上流の山地流域と下流の都市流域とに分け,平成17年度は山地流域における崩壊・土石流の発生と流出・氾濫のシミュレーションモデルなどについて検討した. まず,2003年7月熊本県水俣市集川で発生した崩壊起源の土石流を対象とし,崩壊から土石流への遷移過程を,ある土量の静止土砂が崩壊現象を通じて瞬時に流動化する過程と捉え,ディラックのデルタ関数と応答関数を用いた数理モデルを提案した.このモデルに基づく境界条件のもとで土石流の流出ハイドログラフを評価し,その流出ハイドログラフを境界条件として氾濫解析を行った.その結果は災害状況を良好に再現していることが分かった. 次に,2003年7月福岡県宇美川流域で発生した土石流を事例とし,多数の崩壊を伴った山地流域における土石流の流出解析モデルを構築した.まず,対象流域を斜面部と河道部とに分割し,さらに斜面部を崩壊斜面と無崩壊斜面とに区分した.崩壊斜面では,土石流化した崩壊土の流量,流砂量を斜面上流端に与え,キネマティックウェーブ法を用いて流出解析を行った.無崩壊斜面では,雨水侵食による土砂流出を考慮した流出解析を行った.河道部では,側岸斜面からの流入を伴う場合の河床変動解析を行った.提案された流出解析法は災害状況を良好に再現していることが分かった. 最後に,2005年9月台風14号の大雨時に土石流により被災した鹿児島県垂水市小谷集落を対象に,住民の避難行動に関するアンケート調査を行い,土砂災害や避難に関する知識,土砂災害警戒情報等の避難呼びかけに対する住民の反応及び避難特性を分析した.これらの結果を用いることで災害時の被害想定に資することとした.
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