研究概要 |
本研究は,同一流域内で同時に発生した土石流災害と水災害について被害想定を関連して行う統合型被害予測シミュレーションモデルを開発するとともに,それに基づいた流域の効果的防災システムの構築を図るものである.事例として,2003年水俣市の崩壊・土石流災害,福岡県宇美川流域の崩壊・土石流・水災害,2005年の宮崎水害,鹿児島県垂水市土石流災害などを取りあげ,まず,山地部の上流域における崩壊・土石流流出・氾濫のシミュレーションモデルを,次いで,下流域における洪水流出・氾濫のモデル化を行った.さらに,上流域と下流域のモデルを接続させて統合型被害予測シミュレーションモデルを構築し,最後に,流域全体の警戒避難体制について検討した. 2003年熊本県水俣市集川で発生した崩壊起源の土石流を対象とし,崩壊から土石流への遷移過程について,ある土量の静止土砂が崩壊現象を通じて瞬時に流動化する過程と捉え,応答関数を用いた数理モデルを提案した.このモデルに基づく境界条件のもとで土石流の流出ハイドログラフを予測し,その流出ハイドログラフを境界条件として氾濫解析を行った.次に,上述の崩壊モデルをもとに,2003年福岡県宇美川流域で発生した崩壊・土石流・水災害を対象として,多数の崩壊を伴った山地流域における土石流の流出解析モデルを提案した.この流出解析結果を境界条件として,下流河道に沿った洪水流による1次元河床変動と都市域における洪水氾濫シミュレーションモデルを構築した. 2005年宮崎水害,垂水市土石流災害などを対象として,住民の避難行動に関する質問紙調査を行い,災害や避難に関する知識,避難の呼びかけなど警戒情報等の伝達に対する住民の反応及び避難特性を分析した.これらの結果を用いることで災害時の被害想定に資することとした. 以上の結果をもとに流域全体に渡る統合型被害予測シミュレーションモデルを構築し,被害予測に基づいた災害シナリオの作成と流域における水災害と土砂災害を一元化した警戒・避難体制について検討した.
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