研究概要 |
2004年10月に発生した新潟県中越地震では,都市部の被害もさることながら,中山間地域により多くの被害が発生した.また,それらの被災地のいくつかは,震災後に合併を控えていることなどから,復興への道のりには多くの困難が生じている状況にあった.さらに,震災発生直後,これらの地域は道路の寸断による孤立状態に陥り,避難はおろか,十分な救助救出活動が初動期に十分に行われえなかった.しかしながらそのような困難な状況が発生した一方で,孤立した数日間を集落住民の協力や,井戸水など地域資源の活用によってしのぐなど,現在都市域では想定し得ない対応力の高さも見られ,そのような相互扶助によって培われた意識は復興過程においても大きな役割を果たすことになった. 二年間にわたる本研究課題においてはこれらの問題意識に基づき,孤立集落の被害の実態をヒアリングや地形図をもとに詳細に把握するとともに,被災地における復旧・復興への取り組みを継続的に調査・研究してきた. 具体的には,震度7を記録した北魚沼郡川口町において,発生当初から余震が継続する中,車中泊やテント生活といった避難の多様性が生じたことに着目し,地区の空地利用の状況を定点観測し,その結果から今後の地震災害時の避難や支援活動のあり方について検討を行った.さらに今回の震災によって長期間全村民が域外への避難を余儀なくされ,生活を支えるインフラが壊滅的な被害を受けた旧山古志村(現長岡市山古志地域)の虫亀地区において復旧・復興過程を詳細に調査・分析した.さらには同様の被害を受けながら復旧期にあまり多くの支援が得られなかった旧小国町(長岡市小国地域)法末地区での地域資源を活用した復興への取組に関する継続的な調査によって,今後の中山間地域の防災対策のあり方と復旧・復興の可能性について総合的な検討を行ったものである.
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