研究概要 |
細胞性粘菌Dictyostelium discoideumは土壌中に棲息し、二分裂による増殖、飢餓を引き金とした多細胞化と胞子形成、過剰な水分と暗条件下での有性生殖、という3種類の生殖様式を合目的的に使い分けている真核微生物である。この生物を材料とし、ゲノム・cDNA解析チームによる遺伝子リソース整備の成果を活用して、発生分化を支配する遺伝子間の制御関係を解析するための研究計画に沿って以下の作業を行った。 1.上流プロモーター領域の取得とデータベース化:これまでに得られているcDNAの上流配列データにゲノム配列からの予測ORF情報を反映させ、必要に応じてデータを修正する作業を約80%について終了した。また、cDNAクローンが得られていないものについて、各ORFの上流2000ヌクレオチドの配列をゲノム配列から取得した。 2.発現特性による階層的グループ化:増殖期(G)、無性的発生期(A)、有性生殖期(S)の細胞からmRNAを抽出し、サンガーセンターとの共同研究で全遺伝子アレイに対してS/G,S/A,A/G.のハイブリダイゼーションを行った。各遺伝子を発現特異性でグループ化する作業は現在進行中である。 3.発現グループに特徴的なシス制御エレメントの抽出:上記2項目の作業完了までの試みとして、比較的グループサイズの小さい有性生殖期特異的遺伝子の上流配列に対し、MEMEプログラムによって特異的配列の抽出を行った。その結果、aggtc(t/a)aの配列が配偶子特異的遺伝子の上流に複数回出現していることがわかった。
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