研究概要 |
本研究では,神経保護作用を示すシクロペンテノン化合物について,活性発現にかかわる細胞内の標的タンパク質の同定やシグナル伝達経路の解明を目的に,種々の修飾体および分子プローブの設計・合成研究を展開している。本年度は,神経細胞死抑制活性における構造活性相関を明らかにするため,NEPP11およびNEPP6を構造修飾した化合物の設計・合成を行った。まず,5員環部について,交差共役ジエノンの一方および両方の二重結合を飽和にした化合物を合成した。また,J型の骨格を持つNEPP類縁体を設計し,オルトエステルをアニオンユニットに用いた三成分連結PG合成法により合成を行った。さらに,これら化合物のω鎖に置換ベンゼン環を導入した化合物を同様に合成した。パーキンソン病の細胞モデルの一つであるPC12細胞におけるマンガンイオン誘発アポトーシスに対して,化合物の抑制活性を評価したところ,交差共役ジエノンを持たない化合物は活性を示さないことが明らかとなった。また,J型の類縁体もNEPP11と同等の活性を示し,高濃度における細胞毒性もNEPP11より低いことがわかった。J型のω側鎖へのベンゼン環の導入も活性にはほとんど影響しなかったが,若干毒性が低減する傾向が認められた。続いて,標的タンパク質捕獲のための標識プローブとしてNEPP6およびNEPP11にビオチンを結合させた化合物を合成した。まず,HT22細胞におけるグルタミン酸誘発細胞死の抑制作用について,NEPP11を用いてシグナル解析を行ったところ,ストレスタンパク質のHO-1が遺伝子の転写レベルで誘導されていることがわかった。また,ビオチンプローブを用いたタンパク質標識実験により73kDaのタンパク質Keap1に結合していることが明らかとなった。一方,PC12細胞系での標識実験でもいくつかのバンドが検出された。
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