神経細胞保護作用を示す新規シクロペンテノン型プロスタグランジン類縁体の設計・合成と、その分子プローブを用いた活性発現分子機構の解析研究を行った。 1.神経細胞保護作用を示すNEPPの構造修飾体を種々合成し、パーキンソン病の細胞モデルの一つであるPC12細胞におけるマンガンイオン誘発アポトーシスの阻害作用について構造活性相関を行った。その結果、交叉共役ジエノン構造と親油性のω側鎖が必須であることを明らかにした。また、5員環部のトポロジカルな修飾により、NEPPより抗アポトーシス活性が高く、細胞毒性の低い新規化合物を創製することに成功した。 2.NEPPの酸化ストレスに対する神経保護作用がストレス応答タンパク質の一つであるHO-1をタンパク質および遺伝子のレベルで誘導するためであることを明らかにした。また、NEPPのビオチン化プローブを創製し、その活用によって、NEPPの細胞内標的分子がHO-1誘導に関わる転写因子Nrf2の制御タンパク質Keap1であることを証明した。さらに、ビオチン化プローブを用いてNEPPがニューロンに特異的に集積することを示した。 3.NEPPの5員環部に置換基を導入した新規類縁体を設計・合成し、マンガンイオン誘発アポトーシス抑制作用の検証を行った。その結果、ケトンα位にフェニルチオ基を導入した化合物がNEPPより高い抗アポトーシス作用を示すことを見いだした。さらに、ベンゼン環上に様々な置換基を導入した類縁体を合成し、構造活性相関解析を行った。これにより、最も高活性で毒性の低い類縁体として、パラ位にアミノ基を持つ化合物を創製することに成功した。また、細胞内シグナル解析により、フェニルチオ置換体はNEPPと異なりJNKの活性化を阻害せず、c-Junのリン酸化からカスパーゼ-9の間のシグナルをターゲットとしていることを明らかにした。
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