本研究を遂行することにより、我々が既に開発したとペプチドのサブユニットから形成されるリセプターをもとにして、ペプチドサブユニットをライブラリー法によって機能化し、リボヌクレオペプチドリセプターの結合能・識別能を向上させる方法論を開発した。この方法論により、 (1) アデノシン三リン酸(ATP)とデオキシアデノシン三リン酸(dATP)の識別が可能なRNPリセプターが得られた。また、リボヌクレオペプチドリセプターを、幅広い濃度応答領域と検出波長を持つ分子センサーへと機能化する方法論を開発した。 (2) リン酸化チロシンを含むGpYSRをより高い親和性と選択性で認識するリボヌクレオペプチドリセプターを得た。リン酸化チロシン結合性RNPリセプターは、リン酸化チロシン残基だけでなく周辺アミノ酸配列も高度に認識する。 (3) 神経伝達物質であるドーパミンやヒスタミンなどの生理活性アミンを高選択的に識別するRNPリセプターと蛍光性RNPセンサーを構築した。7-メトキシクマリン修飾ペプチドを有する蛍光性RNPセンサーはドーパミンのα位のメチレンと、カテコール環の3位の水酸基を高選択的に識別した。 (4) PHドメインGRP1を用いて生体内セカンドメッセンジャーイノシトール四リン酸に対するバイオセンサー(IP_4センサー)を開発した。IP_4センサーを細胞内に導入し、ヒスタミンによるH1リセプター刺激に対応した細胞内イノシトール四リン酸のリアルタイム測定に成功した。 これらの成果は、リボヌクレオペプチドによる蛍光性バイオセンサー作製に新概念をもたらし、汎用性の高いシグナル伝達制御・計測デバイスの創製へと発展できる可能性が高い。
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