ユビキノンやプラストキノンなどの生体キノン類の生合成には、膜貫通型タンパク質である芳香族基質プレニルトランスフェラーゼが鍵酵素として働いている。しかしその広い分布と生物学的重要性にもかかわらず、膜タンパク質であることから生化学的解析が遅れいている。本研究では、その一メンバーで、二次代謝産物のシコニンの鍵酵素であるp-ヒドロキシ安息香酸プレニルトランスフェラーゼLePGT1をモデルとし、その結晶構造解析に向けた大量発現系を確立してきた。なおこの酵素はユビキノン生合成系プレニルトランスフェラーゼと同様のグループに属するが、調べた中で最も高い比活性を示したことから、本酵素を材料とした。 これまでに、バキュロウイルスの発現系を用いて、LePGT1-(His)6を機能的に発現させ、活性の高い本膜酵素を含む膜画分を得ている。これをSodium deoxycholateを用いることで活性を保持したまま可溶化することができ、その後のNi-NTA agaroseを用いたアフィニティー精製の段階で界面活性剤をdigitoninに置換することで安定に活性を保持した精製酵素画分を得るプロトコールを確立した。また、この可溶化及び精製のプロトコールを改変することで、収率は犠牲にしても、単一のバンドとしてLePGT1を精製することができた。さらに、発現段階で、従来用いていた静置培養から懸濁培養に変え、培地に血清を加えることで30倍の発現レベルを達成することができた。このプロトコールに従うと、1リッターの培地当りで、3mgの精製膜タンパク質を得ることができる計算となる。発現から一回の精製までに必要な日数は約3日であるため、このプロトコールをもって十分に実用的なレベルで精製膜タンパク質としてLePGT1を供給することが可能となった。 現在、結晶化のスクリーニングの準備をしている段階である。
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