膜貫通型タンパク質である芳香族基質プレニルトランスフェラーゼは、ユビキノンやプラストキノンなどの生体キノン類の生合成鍵酵素として働いている。しかしその広い分布と生物学的重要性にもかかわらず、膜タンパク質であることから生化学的解析が遅れている。本研究では、その一メンバーで、二次代謝産物のシコニンの鍵酵素であるp-ヒドロキシ安息香酸プレニルトランスフェラーゼLePGT1をモデルとし、その結晶構造解析に向けた大量発現系を確立してきた。なおこの酵素はユビキノン生合成系プレニルトランスフェラーゼと同様のグループに属するが、調べた中で最も高い比活性を示したことから、本酵素を材料とした。 LePGT1に部位特異的突然変異を導入し、N-末端側のモチーフA内のD87、D91、およびC-末端側のモチーフB内のD208、D212が酵素活性発現に必須であることを明らかにした。これまでのモデルでいわれていたR153の重要性は、生化学的実験の結果からは活性発現に大きな影響がないことを突き止めた。さらにこれらのDを類似アミノ酸のEに置換した場合、D87E、D91Eは全く活性を示さなかったのに対し、D208EとD212Eは野生型の数%ではあるが明確な活性を示した。ただしこの場合、基質に対するアフィニティーを調べてみると、PHBに対してKmが半分あるいは3分の1となった。一方、D212EはGPPに対するアフィニティーが野生型と大きく変わらず、モチーフBがPRBの認識に重要であることを示唆している。 さらに、D以外のアミノ酸置換を行った所、モチーフAのR76、N83、R96がPHBに対するKm値を大きく上げるのに対し、モチーフBのS219やK229はGPPに対するKm値を大きく上昇させた。このことから、両基質の認識にどちらのモチーフも深く関わることが示唆された。
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