研究概要 |
グリコシンナスペリミシンDは,梅沢らによって放線菌類Nocardia種より単離されたアミノ糖系抗生物質である。グラム陽性菌や陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルをもち,新規な2つのアミノ糖(アミノ糖AとB),桂皮酸とスペルミジンから構成されている。さらに,2つのアミノ糖がウレアグリコシド結合を介して連結するという特異な骨格を有している。本研究は,D-グルコサミン塩酸塩を出発原料とした,右側のアミノ糖の効率的な合成法の確立を目的とした。 D-グルコサミン塩酸塩1を出発原料とした。数段階を経てアセチルグリコシドとして,続いて,フェノールとルイス酸触媒(SnCl_4)でフェニルグリコシドとした。さらに,6位水酸基のデオキシ化と,4位水酸基の立体反転を行った。さらに,フェノールのパラ位にヨウ素を導入してアクリルスペルミジンとのHeck反応により桂皮酸骨格の構築に成功し,アミノ糖Aの合成に成功した。 D-酒石酸を出発原料として,アリルシアナートのシグマトロピー反応を用いる立体選択的なアリルアミン構築法を利用してアミノ糖Bを合成した。すなわち,酒石酸より調製したアリルアルコールを出発原料として用いた。有機亜鉛試薬とプロリン由来の不斉配位子を用いるSoai反応によって,立体選択的にアリルアルコールを合成した。そしてアリルシアナートのシグマトロピー反応によりアリルカルバメートに誘導した。最終段階での脱保護を考慮して,Troc基を選んだ。ルイス酸を用いてアセトニドを脱保護してジオールをアセチル化した。そしてフッ化水素・ピリジン錯体でシリル基を除去して,アルケンをオゾンによって酸化的に切断してアルデヒドとした。生成したラクトールを無水酢酸で処理してアセチルグリコシドとし,さらにトリメチルシリルアジドでグリコシル化アジドとする。アジドの還元とホルミル化,脱水反応によってアミノ糖Bを合成した。現在,アミノ糖BとAのカップリングを検討している。
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