研究概要 |
梅沢らは放線菌類Nocardia種より,新奇なアミノ糖系抗生物質グリコシンナスペリミシンDを単離・構造決定した。この抗生物質はグラム陽性菌や陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルをもち,新規な2つのアミノ糖(アミノ糖AとB),桂皮酸とスペルミジンから構成されている。さらに,2つのアミノ糖がウレアグリコシド結合を介して連結するという特異な骨格を有している。 すでにD-酒石酸を出発原料として,アリルシアナートのシグマトロピー反応を用いる立体選択的なアリルアミン構築法を利用してアミノ糖Bを合成している。すなわち,酒石酸より調製したアリルアルコールを出発原料として用いた。有機亜鉛試薬とプロリン由来の不斉配位子を用いるSoai反応によって,立体選択的にアリルアルコールを合成した。そしてアリルシアナートのシグマトロピー反応によりアリルカルバメートに誘導した。三塩化鉄を用いてアセトニドを脱保護してジオールをアセチル化した。そしてフッ化水素・ピリジン錯体でシリル基を除去して,アルケンをオゾンによって酸化的に切断してアルデヒドとした。生成したラクトールを無水酢酸で処理してアセチルグリコシドとし,さらにトリメチルシリルアジドでグリコシル化アジドとする。アジドの還元とホルミル化,脱水反応によってアミノ糖Bを合成した。この合成ルートのアセトニドを脱保護する段階が低収率であった。条件を探索した結果,プロパンジチオールを溶媒として用い,ルイス酸として三塩化ホウ素・ジメチルスルフィドをもちいる反応条件を新しく見いだすことができた。これによって脱保護とアセチル化の収率が90%に向上した。 昨年にD-グルコサミン塩酸塩を出発原料とした,右側のアミノ糖Aの効率的な合成法を確立している。現在,アミノ糖BとAのカップリングを検討している。
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