研究概要 |
中央部分のアミノ糖Bの合成に関して,アリルシアナートのシグマトロピー反応を用いたアリルアミン構築法の応用を行った。カンファーから数段階を経て調製した1,2-アミノアルコールの不斉配位子をもちいた不飽和アルデヒドに対する有機亜鉛試薬の不斉付加反応によってアリルアルコールを立体選択的に合成した。得られたアリルアルコールをカルバメートに誘導して,脱水反応によってアリルシアナートを発生させた。不安定な化学種であるアリルシアナートは室温以下でシグマトロピー反応による1,3一不斉転写によって,アリルイソシアナートに異性化する。イソシアナートは単離することなく,アルコールと反応させて,アリルカルバメートに誘導した。昨年に開発したプロパンジチオールとルイス酸を活用したアセトニド基の選択的脱保護法を適用したところ,シリル基が脱保護することなく高い収率でジオールを与えた。さらに末端の2重結合をオゾン酸化で切断して,発生したアミノアルデヒドを,分子内の水酸基によるラクトールの生成によってエピメリ化を抑制してペントースを得た。これによってシノジンのアミノ糖Bの改良合成を実現した。また,アミノ糖Bの合成手法をもちいて,海洋天然物パチャストリサミンの合成を行った。パチャストリサミンは,2002年に琉球大の比嘉らにより,海綿Pachastrissaより単離・構造決定された海洋天然物であり,D-リキソ-ファイトスフィンゴシンが脱水し,テトラヒドロフラン環を構築した無水スフィンゴシンである。テトラヒドロフラン環の3っの連続する不斉炭素に結合した置換基は全てシス配置であり,天然のスフィンゴシンには見られない特徴的な構造である。
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