ファインケミカル製品等の製造プロセスにバイオ技術を導入することにより、これらのプロセスを環境適応型製造プロセスに転換することが可能となるが、ファインケミカル製品等の製造プロセスで溶媒として一般的に用いられている有機溶媒の存在下では、既存の生体触媒(酵素・微生物)を用いることができない。有機溶媒存在下では酵素は不安定で容易に失活するためである。そこで、有機溶媒存在下でも失活しない有機溶媒耐性生体触媒が切望されている。 本研究では、酵素の有機溶媒耐性の原因解明とタンパク質工学的手法による新規有機溶媒耐性酵素の開発のため、以下の項目について検討した。 1.分子進化工学的手法による酵素の有機溶媒耐性に関与する部位の同定:有機溶媒耐性酵素を基にしたランダム変異誘発により、酵素の有機溶媒耐性に関与する部位を特定した。申請者は、既に自然界より有機溶媒耐性酵素を得ているので、有機溶媒耐性酵素を基にして、ランダム変異を誘発し、有機溶媒耐性が低下した変異酵素を選択し、その変異酵素の配列を決めることにより、有機溶媒耐性に重要な領域を見出した。 2.異種宿主での有機溶媒耐性酵素の発現と活性化:有機溶媒耐性酵素を大腸菌で多量発現する系を構築すると共に、発現された酵素の活性化に必要な条件について検討した。 3.有機溶媒耐性酵素の基質特異性変換による新規有機溶媒耐性酵素の開発:有機溶媒耐性酵素の基質結合部位を特定し、基質の結合に関与するアミノ酸を置換することにより、新規の基質特異性を有した有機溶媒耐性酵素を開発した。
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