Aβどうしの認識部位にペプチド性の親水性部位を結合させた化合物がAβの凝集を抑制し、細胞毒性を減弱させることを見出している。Aβの凝集(Aβどうしの認識)にはそのタンパク中にあるリシン-ロイシン-バリン-フェニルアラニン-フェニルアラニンのアミノ酸配列どうしの相互作用が大きく関与していることを特定した。それを分子認識部位とし、親水性及び静電的アミノ酸を連結した化合物を設計合成したところ、弱いながらもAβ凝集阻害活性を有する化合物を創製し得た。 そこで本年度にあっては、先ずこの戦略の妥当性の検証と、優れた活性を有する化合物の設計・合成、水晶発振子ミクロ天秤による物理化学的評価を行った。分子認識能を有する部位/化合物と凝集阻害能を持つ部分を種々組み合わせ、多様な凝集阻害剤化合物の合成に成功した。 さらに培養細胞を用いるin vitro評価による候補化合物の選択を経たのち、Alzet法を適用することで、血液脳関門を意識することなく直接マウス脳に継続的に阻害剤を送り込むことによりトランスジェニックマウスを用いてin vivo生物評価を行った。結果は将来有望な大変優れたものであり、産業財産権を出願するに至った。今後の展開としてBBB透過性を考慮した低分子化合物の設計と合成に拡張・着手する段階と思われる。
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