研究概要 |
遺伝的手法を用いたアマミノクロウサギの個体数法を確立するために,捕獲個体及び採集死体の計19個体(1996-2005年)を用いてノウサギのマイクロサテライト10座位の適用,PCR反応条件の確立,有効座位の確定と個体識別に必要な座位数をプログラムNoLocSimにて個体識別に必要な座位数の推定を検討した.19個体中古いサンプル以外の12個体でPCRに成功し,ノウサギの10マイクロサテライト座位中6座位が使用可能となり,最適PCR条件を確立できた.また,12個体の上記6座位で個体識別が可能だった.さらにシミュレーションの結果,個体識別には12座位以上のマイクロサテライト部位が必要と判明した,遺伝的構造の把握のために,2005年3月に採集した糞粒106サンプルを対象にミトコンドリアDNAコントロール領域の約400bpをダイレクトシーケンス法により塩基配列決定し,解析ソフトTCSで最節約法による樹形図作成及びNested Clade Analysisにより遺伝的構造の有無を分析した.44サンプルの解析ができ,14ハプロタイプを検出した.現在のところ地域間で顕著な遺伝的差異は認められず,近年までの全島的な遺伝的交流の可能性が示唆された.2006年2月に実施したサンプル収集では,調査した沢と林道の総数24ルート,発見した糞塊数401,採集サンプルの地点数89で,上記同様の分析を進めている.特定の林道(距離15km)での糞粒発見地点をGPSにより記録し,植生図などの既存のGISデータを用いて周辺環境の特徴を捉えた.自動カメラの設置地点のGPS地点も記録した.糞粒発見地点の周辺は照葉樹林が多いことが捉えられたが,本林道沿い自体照葉樹林が卓越しており,顕著な違いは捉えられなかったが,地形との関係を今後検討する.
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