研究課題
基盤研究(B)
3年間実施したチョウ類のトランセクト調査から、半自然草原がチョウの多様性や希少種のホットスポットになっていることが判明し、チョウ類の多様性維持や希少種保全にとっての半自然草原の重要性が確実になり、その維持機構の解明が重要性を増した。これを受けて以下の草原の調査を実施した。この草原は長草型群落と短草型群落に大別され、チョウ類成虫の吸蜜植物は短草型群落に偏って分布することが示された。その上で、これら2つの群落型の成立機構を明らかにするために、野生動物の攪乱と関係づけて研究し、長草型群落は比較的攪乱が少ない場所に分布し、短草型群落は頻繁に攪乱される場所に分布することが分った。このことから、空間的に不均一な野生動物の攪乱によって短草型群落の空間パターンと種多様性が維持されており、その結果チョウ類の吸蜜植物の空間パターンも短草型群落に偏っていると考えられた。以上より、比較的植物種の多様性が高い草地の維持機構として野生動物の攪乱が重要な要因であることが示唆され、管理に伴う人的労力をかけずとも多様な草地環境を維持することが可能であることが示された。また、この草原周辺を対象に、1995年以降2007年までに観測された衛星画像データを用いた土地被覆分類と画像目視による判読調査を行ない、地上解像度30mのランドサット衛星画像による分類では、落葉期に観測された画像を単独で、あるいは落葉期と着葉期の観測画像を組み合わせて用いることで、草地、常緑樹林、落葉樹林の分布把握が容易であったが、落葉樹林からカラマツに代表される落葉針葉樹林と区分して広葉樹林を識別するのは困難であり、衛星画像と既存データとの組み合わせによる融合解析が必要であることがわかった。一方、高解像度を有する衛星画像の目視による判読から、10mより高い解像度では草原内の樹木分布を特定できることが示唆された。草原への樹木の侵入を衛星画像でモニタリングするためには、高解像度の衛星画像の利用が有効であると考えられた
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