研究課題
本年度は、2年間の調査・研究及び研究会の成果を背景として、新たな展開を目指した。研究参加者の研究の進展に即して、調査研究のための出張を行い、また必要な図書その他の購入を行った。本年度の共同研究会は、研究代表者の山田が、昨年度以来の課題である満洲国皇帝溥儀の高官工藤忠について掘り下げ、伝記的研究を一書にまとめる方向で考えることを図ったが、それは画期的進展をみ、従来全く知られかった未公開新史料を多数入手することができた。これによって、山田が「アジア主義と満洲国-人物研究との関わりで-」と題する報告を行い、溥儀の侍衛長の工藤忠について詳細な報告をし、そのアジア主義と満洲国建国との関わりを述べた。また工藤忠の出身の青森県の新聞「東奥日報」夕刊(11月19日〜11月24日)に、「工藤忠の歴史的役割」と題して5回連載し、研究成果の一部を公開した。さらに、山田の定年退職に伴う最終講義において、「東北アジアのユートピアを追って-満洲国、工藤忠、東北アジアの共産主義-」と題して講義を行った。この講義では、工藤忠関係新史科の一つに焦点をおいて、中国共産党の成立問題に深く切り込み、石川禎浩『中国共産党成立史』(2001年)の結論である"中国共産党の成立は、通説の1921年7月ではなく、1920年11だ"という説連ボルシェビィキ政権によるソ連共産党とコミンテルンのアジアでの活動が大きな意味をもち、現在も共産党政権が3つ残っているアジアにおける20世紀共産主義がユートピア研究の大きなテーマであることを、改めて浮かび上がらせた。なお、山田は工藤忠に関する研究書を既に書き上げ、2008年度中に出版する予定である。また研究参加者はそれぞれ個別の課題について最終年度の報告に向けた研究を進めた。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
細谷良夫編『清朝史研究の新たなる地平 フィールドと文書を追って』山川出版社
ページ: 288-309
宇山智彦編『講座スラブ・ユーラシア学 第2巻 地域認識:多民族空間の構造と表象』講談社
ページ: 175-201
集刊東洋学 97
ページ: 1-19
文化財保存修復学会編『文化財の保存と修復』クバプロ
ページ: 75-86
秋道智彌編『資源とコモンズ』(講座資源人類学第8巻)弘文堂
ページ: 215-242