研究課題
本研究の目的は、日本を目的地ないし経由地とする人身取引の実態について解明し、その防止に資するとともに、女性のエンパワーメント拠点のネットワーク化をはかることである。本年は計画の2年次として、主に(a)国内のプル要因(「需要」)についての現状把握、(b)送り出し地および経由地の実態についての調査を実施した。研究方法として、主に、(1)人身取引問題および性意識に関する国内大規模調査、議員・政府関係者等を含む関係機関の聞き取り調査、(2)日本から帰国した被害者女性に対するインタビュー調査を実施した。(1)では、性行動や性意識に関する国内の先行調査を幅広くレビューし、独自の意識調査を設計し、日本全国の18歳以上65歳未満の男女5000人を対象とした「現代人の意識と行動に関する調査」を実施した。その結果、日本が人身取引の受入国であることにっいては、過半が「知らない」、人身取引対策行動計画等の対策の現状については、82.3%が「知らない」と回答しており、プル要因(「需要」)を抑制する面での取り組みを強化する必要が裏付けられた。(2)としては、日本を受け入れ先とする人身取引の被害にあって母国に帰国したフィリピンおよびタイの女性に対して、現地の被害女性を支援するNGOの協力を得て、インタビュー調査を実施し、家族の生き残り戦略の中で女性たちがおかれたジェンダー状況や被害の実態、帰国後の課題が明らかになった。買春行為を黙認・容認しない意識の涵養、さらには外国人労働者の公正な処遇の確保等、国内の関心・問題意識を高めることで人身取引の「需要」そのものを無くしていく具体的な取組みが求められている。調査研究で得られた知見、および国内外の関係機関とのネットワークを活用し、人身取引の根絶に向けて、「需要」への取り組みを位置づけつつ、今後は日本国内における啓発・教育プログラムを開発していく。
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