研究課題/領域番号 |
17320017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片柳 榮一 京都大学, 文学研究科, 教授 (60103131)
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研究分担者 |
久山 道彦 明治学院大学, 文学部, 教授 (80221943)
竹田 文彦 英知大学, 文学部, 助教授 (60319811)
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 助教授 (70242998)
武藤 慎一 大東文化大学, 文学部, 助教授 (90321455)
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キーワード | 古代地中海 / 多元的状況 / ローマ帝国 / キリスト教 / 国家 / 宗教 / 文化 / 階級 |
研究概要 |
7月に行われた研究会(コロキウム・パトリスティクム)では久山道彦氏に「オリゲネスにおける戦争論」という題で話していただいた。オリゲネスはイエスの山上の垂訓における絶対平和主義ともいえる思想を真摯に受け止め、キリスト者は非暴力主義に徹さねばならず、キリスト者は戦いをすることを禁じられていることを明確に宣言する。しかし地上に悪が厳然として存在するかぎり、悪の抑止としての暴力もまた認めざるを得ない。そこには国家の存在を悪の抑止の故に認めるという醒めた現実主義者としてのオリゲネスの一面も覗かれる。オリゲネスはこの二つの側面を緊張のうちに保持し、キリスト者は現実の戦いには参与しないが、祈りにおいて戦いに参加するという表現で、この緊張を保持しようとした。3世紀というキリスト教が未だ国教化していない時代に許されたキリスト者の一つの在り方ともいえる。12月の研究会では土井健司氏に「ニュッサのグレゴリウスにおける救貧の思想」という題のもとに話していただいた。グレゴリウスはおそらくハンセン病と思われる病で共同体から分離されて暮らしていた一群の人々と接していた。彼はこの病に苦しむ人々に深い同情を示している。それは単にこの悲惨な生活をする人々への自然な憐れみというだけでなく、この悲惨さのうちに象徴的に自らの精神の悲惨、罪の現実を重ね合わせて見ている。そこにはヒューマニズムに基づく近代以降の救貧思想とは少し視点の違うキリスト教古代の救貧思想の一面が覗えるように思える。このほか各自が自らの独自な専門研究を行ってきた。その成果として片柳榮一のアウグスティヌスと西田幾多郎の比較研究や竹田文彦のシリア語聖書の研究が論文として発表されている。
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