研究課題/領域番号 |
17320017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片柳 榮一 京都大学, 文学研究科, 教授 (60103131)
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研究分担者 |
久山 道彦 明治学院大学, 文学部, 教授 (80221943)
竹田 文彦 英知大学, 文学部, 准教授 (60319811)
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 准教授 (70242998)
武藤 慎一 大東文化大学, 文学部, 准教授 (90321455)
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キーワード | 古代地中海 / ローマ帝国 / キリスト教 / 多元性 / 普遍性 / 文化的統一 / シリア教父 / 民族的独自性 |
研究概要 |
本年度は二回研究会(コロキウム・パトリスティクム)をもった。春学期は竹田文彦氏に「女性としての聖霊」ということで、初期シリア教父における聖霊理解という興味深い発表をしていただいた。聖霊はシリア語ではヘブライ語と同様女性形であり、初期シリア教父たちはそこから女性として表象される聖霊について囚われない豊かなイメージの聖霊理解をなした。しかし5世紀以降ヘレニズムの擬人的神理解の排除の思想の影響のもとにこうした理解も排除されていった。この排除された女性としての聖霊理解のうちには現代の我々からは失われた聖霊理解の別の可能性がうかがえる。 秋学期の研究会では武藤愼一氏に「アンティオケア学派におけるエウドキアの意味について」と題してこの学派における神の感情表現について発表していただいた。ここでもギリシア的な擬人的神理解の排除の思想の影響のもとにあるその後のヨーロッパの神理解とは少し異なった神理解としてエウドキアというギリシア語の用法をアンティオケア学派の、殊にクリュソストモスの場合に焦点をあてて武藤氏は考察した。このギリシア語は主に願望という意味と喜びという意味で使われるが、人間の思いを超えた神の思いとしての願望と喜びに如何に人間の思いとしての願望と喜びが重なり行くかに深く思いをいたした古代教父の真摯な思索と生き方を生き生きと描きだしてくれた。古代地中海世界の多様な宗教性とそこに貫かれた豊かな統一性をあらためて示されたように思う。
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