研究課題/領域番号 |
17320017
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
宗教学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片柳 榮一 京都大学, 文学研究科, 教授 (60103131)
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研究分担者 |
久山 道彦 明治学院大学, 文学部, 教授 (80221943)
竹田 文彦 聖トマス大学, 人間文化共生学部, 教授 (60319811)
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)
武藤 慎一 大東文化大学, 文学部, 准教授 (90321455)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2007
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キーワード | 古代地中海 / ローマ帝国 / キリスト教 / 多元性 / 普遍性 / 文化的統一 / シリア教父 / 民族的独自性 |
研究概要 |
現代世界のグローバル化と多元化の経験は現代特有のものであるが、その祖型を古代地中海世界にみることができよう。ヘレニズム文化とローマ帝国とはこの古代世界に統一的形を刻んだ。この一元化において、それぞれの地域の多元化も鋭角的に深められたと言える。キリスト教の形成にとってこの統一的複合体としての古代地中海世界は一つの運命であった。我々の研究の課題は、この環境と主体の相互的関わりを個別具体的に研究することであった。エジプト地域に関してはオリゲネスの戦争論が取り上げられ、古代の戦争観への否定としての絶対的平和の理想が提起された。小アジア地域では紀元世紀以降深刻な社会現象となった貧困の問題を直視したキリスト教司教たちの活動をそれまでのローマ帝国の無視政策と対比させて描きだした。メソポタミア地域では宗教的表象における女性的なものが紀元4,5世紀まで活発に用いられていたことが実証的に宗され、ヘレニズム統一文化との差異が明らかにされた。シリア地域においても神的なものの感情的理解がヘレニズム的非人格的理解に抗して保たれ続けたことが明らかにされた。イタリア・北アフリカ地域ではヴァンダル族のローマ侵攻で混乱する中を生きたアウグスティヌスの「知ある無知」という言葉が考察された。この表現のうちには、一方でヘレニズム文化の伝統としての「無知の知」に連なって文化の多元的相対性に耐えうる精神のしなやかさが示され、また他方歴史の多元性を突き抜けた絶対なるものを探求する魂の真摯さも表されており、この二つが逆説的に「知ある無知」どして総合的に言い表されている、ここに古代地中海の多元的状況を生き抜いたキリスト者の生の精髄が表現されている。
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