研究課題
本研究の目的は、キリスト教美術を中心とするヨーロッパの図像表象文化が、南米アンデス高地およびアマゾン低地の植民地において先住民社会に移入され、受容されるなか、時に本来とは異なる意味や機能を獲得していったプロセスを、実地の作品調査に加えて、詳細な史料調査をおこなうことで、学際的な視点から明らかにしようとするものである。本課題に関し研究代表者は、本年、主として、17世紀のクスコ(ペルー)司教マヌエル・デ・モリネドの美術政策について系統的な研究をおこなった。これに関する史料調査用務のため、研究代表者はスペインに出張し、インディアス総合文書館(セビーリャ)において、同司教が国王宛に送付した書簡を詳細に調査し、美術装飾の荘厳化による先住民布教が、どのような意図のもとに実施されたのかを検討した。また、研究代表者はロサンゼルスにも出張し、本研究に関わる将来の出版についての打合せをおこなった。研究分担者は、低地のミッション地域における先住民に対する布教に際し、聖像がどのような意図と演出のもとで用いられたのかを継続的に研究した。このため分担者は、フランスおよびイタリアに出張し、国立図書館(パリ)などで関連文献の調査を実施した。これらの具体的調査成果をふまえ、代表者と分担者は、植民地統治システムのもとでのキリスト教美術の機能について、学際的な観点からの検討をおこなった。以上の分担研究に加え、本年はさらに、代表者・分担者の継続的な共同研究の成果となる共著書の刊行をおこなった(『南米キリスト教美術とコロニアリズム』、名古屋大学出版会)。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (2件) 図書 (1件)
The Virgin, Saint And Angels : South American Paintings 1600-1825 from the Thoma Collection
ページ: 67-79
キリスト教と文明化の人類学的研究(国立民族学博物館調査報告) 62
ページ: 171-201