研究課題
本研究は、キリスト教美術を中心とするヨーロッパの図像表象文化が、南米アンデス高地およびアマゾン低地の植民地において先住民社会に移入され、受容されるなか、時に本来とは異なる意味や機能を獲得していったプロセスを、実地の作品調査に加えて、詳細な史料調査をおこなうことで、学際的な視点から明らかにするものである。研究代表者はメキシコに出張し、マリナルコ、イスミキルパンなど16世紀中盤の初期ミッションの聖堂壁画を実地に調査して、対抗宗教改革期以降に本格化したアンデスの聖堂壁画との比較検討をおこなった。この結果、ヨーロッパ側で形成された他者表象としての新大陸先住民像を、植民地の先住民自身が受け入れていくという、アンデスにみられる屈折したプロセスがメキシコにも存在すること、ただしそれは、16世紀メキシコに際だった人文主義的なユートピア思想のもとで、より複雑な過程を経て展開したことを明らかにした。また研究分担者・齋藤晃は、ブラジルにおいて、植民地時代のキリスト教聖堂の実地調査と、イエズス会ミッションに関する文書調査をおこなった。リオ・デ・ラプラタ地域全域にわたるイエズス会の活動と、そのなかでの宗教的イメージの利用について詳細な事実関係を把握し、この地域においても「感覚的宣教」が周到におこなわれた実態を解明した。
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待兼山論叢 41
ページ: 1-26
Anuario de Estudios Bolivianos, Archivisticos y Biblio-graficos 12
ページ: 518-609