研究課題/領域番号 |
17320029
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 俊春 京都大学, 文学研究科, 教授 (60198223)
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研究分担者 |
森 雅彦 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (90137612)
河上 繁樹 関西学院大学, 文学部, 教授 (10224734)
根立 研介 京都大学, 文学研究科, 教授 (10303794)
安田 篤生 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80230217)
加須屋 誠 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (60221876)
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キーワード | 展示 / 展覧会 / 美術 / 祝祭 / 絵画 / 彫刻 / エフェメナル |
研究概要 |
本研究で「つかのま展示」と呼ぶのは、美術作品を通常の設置・保管場所から移動させて、別の場所で一定の期間だけ人々に実見する機会を与える特別の展示のことである。本研究では、特に、展覧会制度が確立する以前の前近代においてどのような様態の「つかのまの展示」が存在し、それがどのように人々に受容されていたのかを解明することを目指している。本年度は、主として、(1)「芸術作品のマーケティング戦略としての展示」、(2)「美術愛好家と作品鑑賞のための展示」、(3)「宗教美術にとっての作品展示の意義、および展示の演出法」という三つの観点からの研究を進めた。 (1)の問題に関しては、深谷訓子が、17世紀オランダにおける絵画市場の成熟にともない、絵画取引が多様化し、画家の工房および路面店舗での展示、美術商の店舗での展示、競売と籤における展示など、販売を目的にさまざまな展示形式が発達したことを明らかにした。加えて、ユトレヒトとハーグでは、画家組合の主導によって、組合員の画家たちの作品の展示室が設けられていたという興味深い事実を指摘した。(2)の問題に関しては、安田篤生が、江戸時代に盛んになった薬品会、物産会、書画会に、どのような人々が集い、そこで如何なる美術作品が展覧されていたのかを詳細に考察した。また、研究協力者として吉田朋子が参加して、アカデミーの芸術家たちの作品を広く一般に公開するという目的で創設された「サロン」開催のための準備としての展示作業が具体的にどのように進められたのかを明らかにした。(3)の問題については、皿井舞が、木彫像の表面仕上げのヴァリエーションのひとつである金泥塗り技法に着目して、逆修・臨終行儀の法会に際して用いられる仏像にしばしばこの技法が見られるという重要な指摘を行い、儀礼と荘厳の問題に関して、今後の研究の方向を示した。
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