研究概要 |
本研究は、日本各地に遺る説話画現存遺品を網羅的に調査すること、そのデータを明確に分類整理すること、そこから得られた研究成果を体系的に公開することを通じて、これまで殆ど未着手であった掛幅説話画研究の基礎を構築することを目指す。科研最終年度に当たる今年(H20)度は、以下の事項に当たった。 1,個別作品調査…毎年度報告をしてきた通り、本科研遂行期間中の3年間これまで膨大な作品を調査してきたが、未だそれは現存遺品の一端をみたに過ぎない。最終年の今年はいたずらに作品の数や種類を増すのを避け、堅実にこれまで調査した作品群のデーダ整理(次項)に力を注いだ。残された作品調査は今後の研究課題である。 2,データ整理…前年までに積み残した、調査済み作品の写真データに文字情報を結びつける作業に力を注いだ。結果、14,962件の登録を完成させた(2009年3月時点)。さらに今後のデータ拡充のためにデジタル画像をDB化する機能の強化、文字入力の代わりに項目選択で基礎情報が入る工夫、チェックしたデータを別ファイルに出力する機能の追加等、DBの改良をはかった。これまでで最も充実した説話画DBを構築したと自負する。 3,成果公開…所蔵者及び写真撮影者の著作権保護の観点から説話画DBを無制限に公開することは憚られるが、限られた研究者に試作品を手渡し研究の便を図るとともに、DBのさらなる改良め助言を仰ぐ。本科研の成果として昨年度刊行した『国宝六道絵』は初版完売、重版となった。本書を含む「掛幅説話画大成」第I期(全3〜6巻構成予定)シリーズ刊行に向けて、中央公論美術出版と現在協議中である。
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