研究課題/領域番号 |
17320032
|
研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
板谷 徹 沖縄県立芸術大学, 芸術文化学研究科, 教授 (20130867)
|
研究分担者 |
久万田 晋 沖縄県立芸術大学, 附属研究所, 教授 (30215024)
又吉 靜枝 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (80238922)
花城 洋子 名桜大学, 人間健康学部, 准教授 (50389623)
梅田 英春 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (40316203)
澤井 万七美 沖縄工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (60330726)
|
キーワード | 御冠船踊り / 近代化 / 琉球舞踊 / 芸術諸学 |
研究概要 |
本研究は、近世琉球における宮廷芸能であった御冠船踊りの近代における受容を通して、身体において沖縄がどのような近代をめざしたかを解明することを目的とした。この課題に対する資料として当初は新聞記事と写真を予定したが、後者については思わしい結果が出なかったので途中で断念し、県内発行の地方紙から「琉球芸能」関係の範囲で記事を収集し、戦前部分については記事全文の翻字、戦後、昭和47年の本土復帰までの記事は、見出しを年表化した「琉球芸能関係新聞記事索引」を作成した。これら資料を駆使した本格的研究は今後に俊つことになるが、研究課題について次のような所見を得るにいたった。(1)昭和前期に活躍した玉城盛重を規範とする傾向が戦前からみられ、戦後の文芸復興期に神話化されたこと、(2)戦後の米軍統治期に本土への芸能進出を図ったことから、本土の視線が強く伝承に影響を与えたこと、(3)明治期に芝居の場で伝承されるようになる御冠船踊りが戦後こは女性を主な担い手とする琉球舞踊となり、近世を相対化しない女性的感覚で捉え直されたこと。以上の諸点から、近世の芸能を古典として継承するに際して歴史の相対化が希薄であり、近代の身体を近世のそれに対置することなく、近代の身体で近世を処理することによって近代そのものもまた曖昧なまま現在に至ったということができよう。明治政府以降の沖縄政策がこれに影響していることは看過できないが、今なお沖縄は近代の確立が不十分であるといわざるをえない。
|