平成20年度は本研究の最終年度にあたり、主に成果出版のための準備作業を行った。 1、平成20年8月28〜29日、国文学研究資料館大会議室において共同研究会を開催した(参加者:28日26名、29日27名)。両日で5名の研究発表を行ったが、これらはそれぞれ論文として「江戸文学 特集「〈よみほん様式〉考」)」40号(ぺりかん社、平成21年5月発行)に掲載した。 2、20年度中に発行予定であった「文政期人情本解題」は、国文学研究資料館「近世後期小説の様式的把握のための基礎研究」プロジェクトチーム編「『人情本事典(仮題)』(笠間書院、22年2月予定)として刊行される。19年度に引き続き、解題作成の資料、掲載図版として利用のため、連携研究者3名所蔵の人情本のデジタル撮影を行った。 3、読本について、国文学研究資料館所蔵資料(マイクロ・和古書)を中心に、江戸・上方版その他を判別する一覧表の作成、また、国文学研究資料館において閲覧可能な実録写本類の所在リストの作成を進めた。 4、2・3の研究成果の一部は、国文学研究資料館プロジェクト研究「近世後期小説の様式的把握のための基礎研究」にも活用されている。 本研究は、近世後期上方小説、及びその原拠となった実録写本の検討を促し、同時期の江戸小説理解の幅を大きく広げた点において、日本近世文学研究に寄与したと考える。また若手研究者に魅力的なテーマを提示したことも、本研究の成果の一端である。
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