研究概要 |
本研究は,基盤研究(B)「フランス第二帝政下における都市の変容と文学,芸術」(平成14年度〜平成17年度)の進展を踏まえ,その最終年度に「重複応募の制限の特例」として申請が認められ,新規に始められたものである。三年目にあたる本年度は,各自がそれぞれの関心に応じて本研究課題に関連する調査,研究を進展させることに主力を注いだ。 1.まず研究代表者の石井は,昨年度に引き続き8月下旬〜9月上旬に渡仏し,フランス国立図書館においてフランス第三共和制下における文学の受容,特に19世紀の詩人ロートレアモンの受容に関する資料調査を行ない,多大の知見を得ることができた。その成果はまもなく単行本として刊行予定である。また,石井はこれと並行して第三共和制時代に再評価が進んだ19世紀の思想家,シャルル,フーリエに関する研究も進めており,この主題に関して数編の論文を発表している。 2.鈴木は昨年度までにフランスで収集した雑誌,新聞記事などの資料をもとに,第三共和制における政治と文学の関係について研究を進めている。 3.山田は本研究課題と密接な関連をもつアナーキズムと美学の関係についての研究をさらに深め,その成果を論文として発表した。 4.工藤は第二共和制における宗教と文学の関係について研究を進め,その成果を単行本『砂漠論』にまとめて刊行したほか,この主題に関連する論文を発表し,学会発表も二度にわたって行なった。 これら個別の研究は,いずれも文学作品や思想的著作を第三共和制という時代背景を踏まえながら政治や宗教との関連で読み直す試みであり,それぞれの視点から本研究課題にこれまで不足していた領域横断的な照明を当てるものである。これによってさらに総合的な展望を獲得することが可能になり,研究全体が大きく進捗した。
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