研究課題
本研究は、現存する中国の戯曲文学のうちで最も早い時期のものであり、以後の中国近世戯曲史の展開の上で、大きな意味を持つ元代の雑劇についてさまざまな面からその特徴を明らかにすることを主たる目的としている。元代の雑劇には、性質の異なるテキストが存在するが、本研究はその最古層に属する『元刊雑劇三十種』本を研究対象として、テキスト全文の電子テキスト化に基づき、その語彙のデータベース構築ならびに詳細な校訂と訳注の作成を基礎作業とした上で、そのテキストとしての性格、明代に出版された他のテキストとの関係、散曲など元代文学の他ジャンルとの関係、さらには中国戯曲史に占めるその位置について解明しようとするものである。平成19年度には、昨年度に引き続きテキスト全文の電子テキスト化とともに、三十種のうちの二種すなわち『晋文公火焼介子推』、『承明殿霍光鬼諫』について会読を行い、その校訂、訳注作成を進めるとともに、これまで紀要類に公刊してきた成果、すなわち『尉遅恭三奪槊』、『漢高皇濯足気英布』、『関張双赴西蜀夢』、『関大王単刀会』の四種についての訳注に、新たに『元刊雑劇三十種』全体に対する解説を付し、『元刊雜劇の研究』と題して公刊した。この書は、元刊雑劇をとりあげ、詳細な解釈を加えた本邦初めてのものである。また、研究代表者は、北京師範大学における「中国伝統文化と元代文献国際シンポジウム」において、1914年に『元刊雑劇三十種』が世に知られるようになって以来、我が国におけるこの書に関する研究を総括した上で、本研究がその中で極めて大きな意義をもつことについて、発表をおこなった。
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集刊 東洋学 97
ページ: 40-60
中国文学研究 第10輯
ページ: 232-249