研究課題
ヒトの生得的言語知識がこころの特定の領域に存在しているという仮説、また、この領域固有であると考えられるヒトの生得的言語知識はその機能によって下位部門に区分されており、それぞれの下位部門も領域固有であるという仮説を、言語心理学的手法(心理実験と自然発話分析)及び脳科学的手法(光トポグラフィー)を用いて、言語心理レベルと脳レベルの両面から多角的かつ総合的に検討することが、本研究の目的である。平成17年度は、先ず、人間に生得的に備わっている普遍的言語知識の下位部門である(a)文要素の配列を司る「統語部門」と(b)文要素の音声・音韻情報の出力先である「音声・音韻部門」とのインターフェースに関して、言語心理学の観点から検討した。すなわち、(i)音声・音韻部門と統語部門とのインターフェースに関わっていると考えられており、ヒトの言語の普遍的な特徴を示していると考えられる現象、つまり、音声・音韻上の特徴と文要素配列との相互関連が観察され得る現象を特定し、その正確な記述及び説明を理論言語学の立場から行った後、(ii)言語心理学研究の手法を用いることにより、理論言語学における研究結果の妥当性を検証する言語心理実験を行った。その結果、以上の現象が、幼児の言語知識において観察し得る最も初期の段階から存在していることを、言語習得研究の手法を用いることにより、ある程度明らかにすることができた。次に、生得的言語知識の脳レベルにおける領域固有性を検証するための検討を行なった。先行研究を参考にしつつ、光トポグラフィーを用いた実験に用いる言語刺激とその提示方法、また脳の計測部位等について、言語学及び脳科学の研究者が共同で検討した。その検討に基づき、予備実験を成人の被験者対象に行った。平成18年度に実施する本実験に向けての実験デザインが出来上がりつつある。
すべて 2005
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