研究概要 |
■ナム語文献の校訂 フランス国立図書館所蔵の敦煌チベット文献のうちでナム語文献と考えられる写本について,写真に基づき校訂作業を行なった。その結果,P.t.1246という編号の断片資料はややまとまった量の写本であるP.t.1241の一部であったことを復元し、またこの写本が大英図書館のナム語文献とひと続きのものであったことを実証した。背面の漢文文書を精査した結果、フランス所蔵の文献のあとにイギリス所蔵の文献が接続すること、またふたつの文献の間には短い欠落部分があることが明らかになった.大英図書館の旧インド資料館所蔵のナム語の文献については,前年度に引き続き当該写本の写真を精査してテキストの校訂作業を進め,F.W.Thomasの解読を仔細に検討して,方法論上の問題点を整理した. ■関連資料の収集 校訂本の作成ならびに解析の基礎作業として,古代ナム語文献についての研究書,研究論文ならびにF.W.Thomasの先行研究に対する書評や批判論文などの諸資料を,昨年度の引き続き網羅的に収集したほか,西夏語を含む古代のチベットビルマ諸語の復元に関する文献資料,またその後裔と考えられる四川省の川西民族走廊に分布する羌語支の諸語についての研究資料を収集した. ■研究基盤の整備 解読のためのツールとして中古中国語の音韻範疇の索引である《漢字古音手冊》の電子テキストを基に,字音の検索システムを試作したが,利用にあたっては中古中国語から宋元時代への音韻変化の鍵を握る細かな音韻の区別についての情報の追加が必要であることが判明した.また藏漢対音資料を電子テキスト化する作業を継続し,校訂テキストデータの作成を行なった.
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