研究分担者 |
宮谷 真人 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90200188)
中條 和光 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90197632)
藤木 大介 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教 (60403599)
小泉 政利 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (10275597)
牧岡 省吾 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (60264785)
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研究概要 |
母語話者が音声提示された複合語を理解する過程について,その認知過程と神経基盤とを明らかにすることがこの研究の目的である.本年度は前年度までに実施した複合語を対象とする研究成果をまとめるとともに,言語の認知過程に関する(1)〜(5)の研究を行った.(1)文の意味理解の過程におけるアスペクト情報の処理について検討し,文中にアスペクト情報の不一致が存在する際に処理負荷の増大が起こること,アスペクト情報の処理が逐次的に遂行されることを明らかにした.(2)否定副詞の存在が文処理過程に及ぼす影響を調査し,満足されない依存関係の存在が文処理の負荷を高めることを明らかにした.(3)関係節の処理過程において,空所に付与される格助詞の相違や従属節の予測可能性など,日本語特有の要因が処理に影響を及ぼすことを明らかにした.(4)かきまぜ文の処理における処理負荷が,どの時点でどのような理由で生じるかを探るために,読文時間計測実験と事象関関連電位計測実験とを実施し,話者がかきまぜ語順に気付いた時点と,文末の動詞を処理する時点の二箇所で主要な処理負荷の増大が見られること,かきまぜ文に気付いた時点でN400と呼ばれる事象関連電位成分が観察されることがわかった.研究成果は,いずれも国際学会において発表し,一部を学術誌に掲載した.(5)言語処理過程において視覚呈示されるオブジェクトをどのように注視するか計測する「視覚世界パラダイム」と呼ばれる実験方法を用いて,文産出時に単語の語彙処理と文法関係の決定が平行して行われていることを示唆する結果を得た.研究成果を国際的に発信し情報交換を促進するためにメリーランド大学言語学科/言語の認知神経科学ユニットのJeff Lidz教授を招聘し,言語の処理と習得に関する国際ワークショップ及びセミナーを実施した.
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