研究概要 |
今年度は,各分野における類型論的課題について,日本語,英語,その他の言語のデータに基づいて研究を行った.研究はまとめの段階に入りつつある. 音韻論:二重母音の非対称性と外来語アクセントについて、対照言語学的研究を行った。二重母音の非対称性については、[ai]と[au]の振る舞いが異なることを日本語の諸方言(東京、鹿児島、甑島)と他の言語(韓国語、ルーマニア語)のデータをもとに論じた。また外来語アクセントについては日本語の諸方言と韓国語慶尚道方言とを比較し、その異同を論じた。(窪薗) 形式統語論:本年度は,特に日本語において機能範疇として機能すると考えられる否定語の「ない」の中にも,文法化する以前の状態を保っているものがあることを,否定のイディオムなどを用いることにより検証した。(岸本) 機能統語論:「前・後」のような空間概念た「以前・以降」のような時間概念へ拡張する際の言語間に見られる普遍性と個別性を,マラーティー語、日本語、英語などの対照研究を通じて明らかにした。特に、非直示的な状況では、マラーティー語と日・英語は正反対の拡張パターンを示し、その背後にある捉え方の違いに光を当てた。(パルデシ) 意味論:英語の結果構文に関する研究,およびメタファーに関する論文をまとめら.また,移動表現の類型論に関するワークショップを行い,今まで移動のみ基づいて行われてきた類型を,使役移動,視覚的放射を含めて議論する時に,新たなパタンが浮かび上がってくることを明らかにした.その成果は,書籍に形にすべく編集中である.(松本) 語用論:語用論の基礎理論を説得の立場から考え、日本語語用論学会のシンポジウムにて概略を発表。また自動詞・他動詞の言語対照の本を編集中。(西光)
|