今年度は、来年度に報告書として作成予定の『日本朝鮮語教育史」(仮)編纂のための基礎研究を中心に行った。 その成果としてまず、報告書(1)『朝鮮語教育史人物情報資料集』を研究代表者および3名の研究協力者が分担執筆して作成した。本資料集は、19世紀末から21世紀初の日本において、朝鮮語の教育・学習に関わった人物に焦点をあて、各種データを採録したものである。具体的には、様々な教育機関の卒業生(在学生)、外務省・文部省・熊本県による留学生、朝鮮語奨励試験等の試験合格者、朝鮮総督府の『朝鮮語辞典』・「諺文綴字法」に関与した人々、NHKの朝鮮語講座の講師等についての各種データを収録した。また、巻末には1880年から1945年に至る時期に刊行された、朝鮮語学習書の目録も収めた。 このほかの成果としては、朝鮮語専攻の学科がなかった明治20年代の日本人の朝鮮・朝鮮語観について明らかにした、石川遼子「朝鮮観の錯綜-明治二十年代-」(『日本史の方法』2)、地名「奈良」の意味と表記および金沢庄三郎「寧楽考」の意義について論じた、石川遼子「寧楽・平城・奈良-研究史の一端から-」(『奈良女子大学21世紀COE論集』)、植民地期朝鮮における言語運動(ハングル専用化運動)をめぐる植民地性と近代性の交錯について、運動の過程と周辺的事実との関係性から具体的に検討した、三ツ井崇「植民地期朝鮮における言語運動の展開と性格-1920〜30年代を中心に-」(『歴史学研究』802)がある。
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