昨年度に作成した『朝鮮語教育史人物情報資料集』等の成果を踏まえつつ研究を進め、研究成果報告書『日本近現代朝鮮語教育史』を研究協力者の石川遼子・山田寛人・三ツ井崇と共に編纂した。ここでは、日朝関係に大きな関わりを持つ近代以降の日本人への朝鮮語教育を取り上げ、「教育機関等における朝鮮語教育」(第1章)、「朝鮮語の講習と試験の制度」(第2章)、「朝鮮語の研究・教育・通訳にたずさわった人々」(第3章)、「朝鮮語の学習書・辞書と規範」(第4章)、「朝鮮語教育史を考える」(第5章)の5つの側面(44項目)から考察・総合し、その全体像を実証的に解明した。 この他、従来は簡単な略歴が知られていたのに止まる金沢庄三郎の詳細な年譜を編纂して解題を付した、石川「金沢庄三郎年譜(編纂と解題)」、日清・日露戦争期に新設された朝鮮語教育機関を網羅的に取り上げ、当時の朝鮮語をめぐる雰囲気を描いた、山田「日清・日露戦争と朝鮮語ブーム」、日本語教育を行った側の意識を示すことで「強制」ということばでは説明できない側面を明らかにした、山田「植民地朝鮮における日本語教育の近代的側面」、植民地期朝鮮での言語運動の過程での「ハングルの日」顕彰の政治的文脈を論じた、三ツ井「植民地朝鮮におけるハングル運動と「伝統」」等の成果がある。 また、2006年度韓国社会言語学会・国立国語院共同国際学術大会(2006年11月11日/於高麗大学)で、「「どのように」の外国語教育と「なぜ」の外国語教育」(植田)、「金沢庄三郎と朝鮮語教育」(石川)、「植民地期に朝鮮語を学んだ日本人」(山田)、「日本の植民地支配と言語政策」(三ツ井)と題する研究発表を各研究者が朝鮮語で行った。さらに、htt://www1.doshisha.ac.jp/~tmitsui/collaborating_research/seika.htmlを開設した。
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