1.本研究のテーゼである「歴史学の特性は、要素の結合のあり方によって決まるのではなく、むしろひとつの文化全体における歴史学の位置・役割によって部分の特性が、そして要素の結合のあり様が決まる。部分の性質が変わっても全体の性質は保存されることがあり得る」ことを、これまでの研究成果をもとに、最終的なとりまとめを行った。 2.東アジアと旧共産主義諸国家においてはなぜ歴史が規範的であったのかを、その文化的背景としての「啓示宗教の非存在」との関係から考察した。特に21年度は紀年の特定方法に焦点を当てた研究を行い、東アジアにおける紀年法の非宗教的性格、旧共産主義国家における「脱宗教化によるキリスト教紀年法の継続使用」に関して新知見を得た。 3.認識の学問として発達した西洋の歴史学(Cognitive Historiography)と、規範の学問として展開してきた東アジアの歴史学(Normative Historiography)を分析検討した。その結果として、歴史学の東西比較という視点をより深化させた視点である、歴史学自体に内在する規範的要素と認識的要素という角度から本研究のテーマを整理統合することが可能となった。 4.本研究の成果の一部を、8件の学会(国際学会7件、国内学会1件)で研究発表した。 5.これまでの本研究の成果の一部を、歴史学的時間の持つ規範的側面と認識的側面を中心に集大成し、『世界史における時間』(山川出版社)として公刊した。
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