本研究は、1999年に中国寧波で発見された北宋の令である『天聖令』の金文公開に備えて、受け皿となる研究の体制を構築し、日唐律令制比較研究を新たな段階に進めることを目的としている。 2006年11月に中国社会科学院歴史研究所の整理により刊行された『天一閣蔵明鈔本天聖令校証』は上下2冊、750頁に及ぶ大箸であり、そこに示された唐令復原案や論証の検討を、研究代表者と連携協力者計10名が令の篇目ごとに分担して行い、今年度は東京・名古屋・京都・福岡で計4回の研究会を全員参加の形で開き、成果を報告した。5月の国際東方学者会議では、研究代表者大津が組織責任者となって歴史研究所の孟彦弘氏を招いて唐関市令の具体的復原に関わる研究の報告をお願いし、連携研究者と協力者の協力を得て「天聖令と律令制比較研究」と題する国際シンポジウムを開催し、充実した報告と親密な討論により、研究の現状と問題意識が多くの参会者に共有されて学会に大きな刺激となった。11月にはほとんどのメンバーが執筆した4年間のまとめの成果といえる論文集『日唐律令比較研究の新段階』を、歴史研究所の黄正建氏の原稿もえて、山川出版社から出版した。 北京で歴史研究所のメンバーとの交流を継続しているほか、6月には中国人民大学で開かれた「天聖令」研究の学術研討会に参加して交流を深め、中国側との打ち合わせにより年末刊行の『唐研究』14巻「天聖令及所反映的唐宋制度與社会研究専号」(北京大学出版社)に日本側から4本の論文を中国語で掲載し、中国・台湾の研究者との国際学術交流を進展させた。(連携研究者:池田温・坂上康俊・古瀬奈津子・榎本淳一・丸山裕美子・辻正博・大隅清陽・三上喜孝・稲田奈津子、研究協力者:吉永匡史・武井紀子)
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